蓄電池を検討していると、「全負荷型」「特定負荷型」という言葉を目にする機会が増えてきます。しかし、この2つの違いが曖昧なまま導入を進めてしまうと、停電時に思ったように電気が使えないといった後悔につながることも少なくありません。
実際、パナソニックやニチコンなどの主要メーカーも、蓄電池システムを「全負荷型」「特定負荷型」に分け、それぞれ異なる使い方・設計思想を前提に製品や構成例を示しています。これは単なる名称の違いではなく、停電時の生活そのものを左右する重要な分岐点です。
この記事では、メーカーが公式に示している考え方や仕様を踏まえながら、
全負荷型と特定負荷型の違いを基礎から整理し、自分の家庭に合った蓄電池を判断できる状態を目指して解説していきます。
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この記事でわかること
- 全負荷型蓄電池と特定負荷型蓄電池の本質的な違い
- 停電時にどこまで電気が使えるのかという現実的な判断軸
- 200V機器(IH・エアコンなど)と全負荷型・特定負荷型の関係
- 後悔しないために導入前に必ず確認すべきポイント
蓄電池の「全負荷型」と「特定負荷型」とは何か?
全負荷型蓄電池の基本的な考え方
全負荷型は、停電時に家全体の分電盤側へ給電できることを主眼にした方式です。照明やコンセントだけでなく、機器構成によっては200V機器(IH・エアコンなど)も停電時に使えることを特徴として掲げる製品があります。
たとえばニチコンのトライブリッド蓄電システムでは「全負荷200V標準搭載」として停電時でもエアコンやIHの使用に言及しています。
ただし、全負荷型は「家中どこでも電気が通る」一方で、停電時に同時使用が増えるほど蓄電池の残量は早く減りやすくなります。全負荷型の使い勝手を最大化するには、停電時の運用(使う機器の優先順位づけ)まで含めて考えることが鍵になります。
特定負荷型蓄電池の基本的な考え方
特定負荷型は、停電時に電気を流す回路をあらかじめ選んで限定し、そこだけをバックアップする方式です。パナソニックの創蓄連携システムの構成例では「特定負荷ブレーカ付」の電力切替ユニットが示されており、停電時の給電範囲を絞る設計思想が読み取れます。
この方式は、停電時に「必要最低限の回路」へ確実に電力を回せるため、生活インフラ(冷蔵庫・照明・通信・給湯の一部など)を守る設計と相性がよいです。反面、停電時に使える場所や家電は選定した範囲に限られるため、導入時点での回路設計が満足度を左右します。
「負荷」とは何を指しているのか(用語整理)
ここでいう「負荷」は、難しい言葉に見えますが、家庭用の文脈では電気を使う側(回路・家電・コンセント群)のことを指します。
- 全負荷:家の分電盤につながる回路“全体”を停電時にカバーする考え方
- 特定負荷:分電盤のうち停電時に必要な回路だけを選び、そこをカバーする考え方
なお、業界の説明では「全負荷(旧:一般負荷)」のように呼び方が混在することがあります。検索中に「一般負荷型」を見かけた場合も、文脈上は全負荷型と同じ軸で整理されることが多い点は押さえておくと読み解きやすくなります。
全負荷型と特定負荷型の違いを一覧で比較
停電時に使える電気の範囲の違い
最も本質的な差は、停電時の「使える場所(回路)」です。全負荷型は分電盤全体へ給電する設計で、家中の照明・コンセントが使える状態を目指します。
一方の特定負荷型は、停電時に通電する回路が限定されます。パナソニックの構成例でも、特定負荷ブレーカ付の切替ユニットが用意され、停電時の給電範囲を設計で切り分ける前提が示されています。
停電時の生活イメージが「普段に近い家全体」なのか、「必要な場所を確実に」なのかで、選択が分かれます。
200V機器(IH・エアコンなど)の対応可否
200V機器の停電時利用は、方式だけでなく製品仕様・システム構成に左右されます。とはいえ傾向としては、全負荷型のほうが「200V機器も停電時に使える」ことを前面に出すケースが目立ちます。たとえばニチコンは全負荷200Vを標準搭載として、停電時のIH・エアコン利用に触れています。
一方で、特定負荷型は200V対応が限定的になりやすい、という説明が見られます(ただし“必ず非対応”と断言できる話ではなく、あくまで製品・構成次第です)。
200V対応で見落としやすいポイント
200Vが「使える」とされていても、停電時の同時使用まで保証する意味ではありません。停電時出力(kVA)を超えると使えない/制限がかかる可能性があるため、後述の「停電時出力」とセットで判断する必要があります。
電気の使い方・運用面での違い
全負荷型は、停電時でも「いつものコンセントが使える」状態になりやすく、生活の立て直しが早いのが魅力です。反面、停電に気づかないまま複数機器を同時に使うと、蓄電池の消費が想定より速く進むことがあります。
特定負荷型は、停電時に通電する回路が絞られているため、電気の使いすぎを抑えやすい側面があります。停電時に守りたい回路が明確な家庭では、結果として「長くもたせる」運用が組みやすくなります。
分電盤・切替方式の違い
全負荷型では、分電盤全体をバックアップ対象として扱うため、全負荷対応の分電盤やシステム構成が組まれます。ニチコンの資料には「全負荷対応分電盤」に触れている記載があります。
特定負荷型では、停電時に通電させたい回路を分けるために、特定負荷ブレーカや切替ユニットを含む構成が提示されることがあります。パナソニックの例では、特定負荷ブレーカ付の電力切替ユニットが明示されています。
工事内容・設置条件の違い
工事の中心は「どの回路を停電時に生かすか」「そのために分電盤側をどう組むか」です。全負荷型は対象範囲が広いぶん、既設分電盤の状況や主幹容量、設置スペースなどの確認がよりシビアになることがあります。
特定負荷型は回路設計が肝で、生活上の優先順位を反映させた回路選定ができるほど満足度が上がります。逆にここを曖昧に進めると「停電時に使いたい場所が使えない」ズレが起きやすいため、見積もり段階での詰めが欠かせません。
停電時の使い勝手はどう変わる?
全負荷型の停電時の生活イメージ
全負荷型は、停電が起きても家の多くの場所で電気が使える状態を目指します。懐中電灯を探して回路を確認する負担が減り、在宅ワークや子育て世帯など「止まると困る時間」が長い家庭で安心材料になります。
たとえば、全負荷200Vに言及する製品では、停電時でもIHやエアコンなどの稼働が想定されています。
一方で、停電時は系統電力が使えないため、実際に動かせる機器の量は蓄電池の残量と出力に依存します。「家全体が点く」ことと「普段と同じ使い方ができる」ことは同義ではない、という整理が現実的です。
特定負荷型の停電時の生活イメージ
特定負荷型は、停電時に生かす回路が明確で、「どこが使えるか」を家族全員が理解しやすくなります。冷蔵庫の回路、リビングの照明、Wi-Fi周りのコンセント、スマホ充電など、停電時の必需品を優先して組む発想です。
パナソニックの構成例で「特定負荷ブレーカ付」ユニットが示されているように、停電時の給電範囲を設計で分ける前提があるため、暮らしに合わせた最適化がしやすいと言えます。
同時使用・電力制限で注意すべきポイント
停電時の満足度は「容量(kWh)」だけでなく、「出力(kW/kVA)」が大きく関係します。出力は、同時に動かせる家電の上限を左右します。
たとえばニチコンのトライブリッド蓄電システムは、停電時出力について「5.9kVA」など具体値を示しています(条件により数値が変動する記載もあります)。
このように、メーカー仕様で停電時出力が明記されていることが多いため、エアコン・IH・電子レンジなどを停電時に使いたい場合は、使いたい家電の組み合わせで出力が足りるかを事前に確認する流れが現実的です。
全負荷型が向いている家庭の特徴
オール電化住宅の場合
オール電化は、調理や給湯、暖房に電気の比重が寄りがちで、停電時の影響が大きくなりやすい傾向があります。IHなど200V機器を停電時にも使いたいニーズがあるなら、全負荷200Vに言及するような構成が候補に上がります。
ただし、給湯機器や暖房機器は出力要求が大きいこともあるため、「全負荷=全部動く」と短絡せず、停電時出力とのバランスで検討することが欠かせません。
停電時も普段に近い生活をしたい人
小さなお子さんがいる家庭、在宅ワーク中心の家庭、介護・医療機器がある家庭などは、停電時の不便がそのまま生活のリスクにつながりやすい場面があります。全負荷型は「使える場所の広さ」という体験価値が高く、心理的負担を減らす方向で効いてきます。
普段と同じ感覚で動けるようにするなら、停電時にどの部屋・どのコンセントが使える状態になるかを、施工時点で明確にしておくと安心につながります。
200V機器を停電時に使いたいケース
200V機器を停電時に使うことを重視するなら、最初から200V停電対応を掲げる製品・構成を候補に入れるのが近道です。たとえばパナソニックは停電時出力200Vタイプ/100Vタイプの構成例を分けて提示しています。
このように、メーカーが構成例として分けている場合は、選択時点で「どのタイプの構成になっているか」を確認しやすく、見積もり比較も進めやすくなります。
特定負荷型が向いている家庭の特徴
停電時は最低限の電気で十分な場合
停電時に必要なものが「冷蔵庫、照明、スマホ充電、通信、暖を取る最低限」などに整理できるなら、特定負荷型は合理的です。必要回路を絞ってバックアップする設計のため、停電時の電気を目的に沿って使いやすくなります。
「全部使えなくても困らないが、止まると困るものは確実に守りたい」という考え方にフィットします。
蓄電池容量を効率よく使いたい人
同じ容量でも、停電時に通電する範囲が広いほど消費は増えやすくなります。特定負荷型は、停電時に通電する回路が絞られるため、結果として「必要なところに電気を回し続ける」運用が組みやすいです。
停電が短時間で終わる地域もあれば、復旧に時間がかかるリスクを見込む地域もあります。後者を強く意識するほど、特定負荷型の思想は分かりやすい武器になります。
コストや工事を抑えたいケース
導入コストは機器価格だけでなく、分電盤側の工事や構成機器の違いも影響します。パナソニックの構成例では、特定負荷ブレーカ付の電力切替ユニットなど、構成の選択肢が提示されています。
全負荷型と比べて「家全体のバックアップ」を前提にしない分、要件を絞った提案になりやすいのが特定負荷型です。とはいえ、最終的な費用感は住宅の配線状況や主幹容量、既設分電盤の条件で変わるため、見積もりで同条件比較する姿勢が大切になります。
よくある誤解と注意点(選び方で失敗しないために)
全負荷型=電気が無制限に使えるわけではない
全負荷型は「停電時に給電できる範囲」が広い方式であって、使える電気の総量・同時使用の上限まで無制限にするものではありません。メーカーは停電時出力(kVA)を仕様として示しており、たとえばニチコンは停電時5.9kVAなど具体値を掲載しています。
このため、停電時に何を同時に動かすかを決めずに「全負荷だから安心」と捉えると、想定と現実にギャップが生まれます。全負荷型ほど、停電時の使い方のルールづくりが効いてきます。
特定負荷型=不便とは限らない
特定負荷型は、使える場所が限定される分「不便」という印象を持たれがちです。ところが実際には、停電時に本当に必要な機器を明確にしておけば、むしろ迷いが減り、電気の使い方が安定します。
また、特定負荷型は200V機器に対応しないことがある、という説明も見られますが、方式だけで一律に断定するより、候補機種の仕様(停電時出力100V/200V、接続方式)を見て判断するほうが安全です。
メーカー・機種によって仕様が異なる点
「全負荷」「特定負荷」という言葉は、停電時の給電設計を表す大枠の分類ですが、実際の使い勝手は次の要素で変わります。
- 停電時出力(kVA)と、その条件(蓄電池のみ/太陽光併用など)
- 停電時の出力が100V/200Vのどちらか、または構成で選べるか
- 分電盤・切替ユニットの構成(特定負荷ブレーカ付、全負荷対応分電盤など)
言葉だけで判断せず、仕様表とシステム図で「停電時にどの回路が生きるのか」を確認する姿勢が、失敗を避ける近道になります。
全負荷型・特定負荷型を選ぶ前に必ず確認すべきポイント
停電時の出力(kVA)の確認
停電時に「どれだけの機器を同時に動かせるか」は、停電時出力で決まります。カタログやメーカーサイトに数値がある場合は、必ずその条件(蓄電池のみか、太陽光併用かなど)まで確認しておくと、見積もり後のズレが減ります。ニチコンは停電時出力を5.9kVAとして掲載し、条件差による数値の違いにも触れています。
停電時に使いたい家電・回路の洗い出し
ここが曖昧だと、全負荷型でも特定負荷型でも満足度が下がります。たとえば「冷蔵庫は絶対」「リビング照明とWi-Fiは必須」「冬はエアコンも」など、暮らしの優先順位を言語化しておくと、回路設計の精度が上がります。
特定負荷型はもちろん、全負荷型でも停電時の電気を長持ちさせるために優先順位づけが効いてくるため、事前整理がそのまま安心に直結します。
太陽光発電との連携有無
太陽光がある場合、昼間の発電で蓄電池へ充電できるか、停電中に太陽光をどのように使える設計かで、復旧までの耐久力が変わります。製品によって入力(太陽光の受け方)や構成が異なるため、候補機種のシステム図・仕様表で確認するのが現実的です。
たとえばELIIY Powerの全負荷型ハイブリッド蓄電システムのカタログでは、入力・出力の仕様が詳細に記載されています。
将来の家族構成・ライフスタイル変化
今は在宅が少なくても、将来的に在宅ワークが増えたり、子どもが成長して部屋の使い方が変わったり、EVを導入したりすると、停電時に守りたい負荷も変わります。
全負荷型は将来の変化に対して「カバー範囲」で柔軟性を持ちやすく、特定負荷型は「優先回路をどう組み直すか」という視点が必要になります。どちらが正解というより、将来の変化を見越した設計が、長期的な納得感を作ります。
まとめ|全負荷型と特定負荷型は「停電時の暮らし方」で選ぶ
比較検討時の判断軸の整理
- 停電時に「家全体に近い状態」を求めるなら、全負荷型が選択肢になりやすい(200V対応を掲げる製品もある)
- 停電時に「必要な回路を確実に守る」設計をしたいなら、特定負荷型が検討しやすい(特定負荷ブレーカ付の構成例がある)
- どちらでも、最終的な体験は「停電時出力(kVA)」「停電時に生きる回路」「100V/200V構成」の3点で決まる
見積もり・相談時に聞くべき質問
- 「停電時に通電する回路」を、分電盤のどのブレーカ単位で設計するのか
- 停電時出力(kVA)はいくつで、条件(蓄電池のみ/太陽光併用など)は何か
- 200V機器は停電時に使える構成か(使える場合、同時使用の目安はどう考えるか)
- 特定負荷型の場合、特定負荷側の設計(ブレーカ・切替ユニット)をどう提案するのか

